清々しい。

気持ちが軽い。

前回、小樽 南防波堤で釣った立派な一本により、翔のアブラコシーズンは開幕した。

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シーズン初モノの影響力は絶大で、釣りたいけど実現できいてないという、焦りやもどかしさが一瞬にして消え去る。

それも、その一本が満足のいく一本であればなおのこと、消え去るどころか暫く心地良い余韻に浸ることになる。

例外なく翔もその余韻に浸り、ふと腕に蘇る引きの感触に高揚していた。

完全に調子に乗ってしまった翔の頭の中は必勝パターンの絵図。

ああしてこうするとこうなって、こうしてああするとドンッとなってギュッと……

ただこのイメージ、物凄く大事だと思っている。

このイメージが湧いてくる、もしくは意図的に思い出す事ができるときは釣れる!!

しかし、そんな説明できない何かが高まっている状況とは裏腹に、海の天候は風が強かったり、雪雲に覆われていたりと思わしくない状態。

ただここでも、満足のいく一本の影響が作用する。

行ってみてダメそうだったら帰ればいい……

心の余裕だ。

普段の釣りたくて仕方がない心理状態であれば行ったら最後、少しでもコンディションの良い場所を探して回ったり、無理して頑張って結果を出せずにやきもきするのがオチだ。

余裕って素晴らしい………。



という訳で、小樽南防波堤の天気予想は降雪と6mの風だが、仕事から帰宅してひと休みしてから小樽 南防波堤へと車を走らせた。

南防波堤の駐車場はマメイカがまだ釣れているせいか、少々混み気味。

たまたま空いていた翔のお気に入りの場所に車を止め、防波堤へと足を踏み入れた。

この時風は3m程で、問題はないレベル。

風向きも内海方面から外海方面に吹く風で、横風ではないため、コンデイション的には悪くない。

翔は、先端手前150mの所から開始することにした。

テキサスリグ7gに3インチ前後の甲殻系のワームを装着し、内海に撃ち込んでいく。

向かい風に正対している状況なので、サイドキャストで弾道を低めにし、出来るだけ遠くに飛ばして探っていった。

メインターゲットはアブラコだが、駆け上がりを中心に攻めていくが、その向こう側に広がる砂地の起伏にアブラコやソイが付いている可能性もあるので、気を抜かず丁寧にズル引いていく。

前の記事でも説明したが、そのまま引いていき、駆け上がりの起点に差し掛かり、コツン...ゴリゴリ...などの反応が出たらロッドをゆっくり立てるように引き、捨て石や構造物の輪郭を撫で、途中の隙間や穴に落とし込んだり、リグを宙吊りにするなどして魚にアプローチしていく。

夜のアブラコは、こちらからルアーを魚の目の前に持っていくことが重要。

海中を想像し、居そうだと感じたところでネチネチと細かく誘いを入れていく。



タンッ!!
マゾイ


コッココッ!!
ガヤ


ココココッ!!
ガヤ


ココックックッ!!
ガヤ


ゴッ!!
シマソイ


クックククッ
ガヤ


カッ!!
マゾイ



高活性なガヤに混じり、ソイがよく釣れる。

ただし、サイズがイマイチであるため、致命傷個体を除いてリリースとなった。

そうしているうち次第に風が強まっていき、複雑な根をトレースすることが困難になってきたため外海側を探るも、良い反応を得られず。

やむなくボトムコンタクト主体の釣り方からスイミング主体の釣り方に変更した。

低水温期間中はボトム系よりも反応は劣るが致し方ない。

翔は、カーリーテイル系のワームをテキサスリグにセットしキャスト。

少しずつ移動しつつ広範囲を探る。

この時、内海に向かって右側(先端方向)へ潮が流れていたので、出来るだけ潮を噛むように右斜めにキャスト。

真正面から強い風が吹いているので、操作感を失わない程度の角度に抑え、ボトムスレスレの低層をカーブを描きながら、できる限り駆け上がりの境界線付近を長く泳がせられる軌道になるように調整した。

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着底を感じたらリフトさせ、巻きを主体に時々トウィッチを入力しつつ、レンジが上がり過ぎたらテンションフォールでレンジ調整。

すると数投目.........



カッ!!



鋭いアタリが、ロッドを支える指の腹に伝わって来た!!

巻いて泳がせている時に出たアタリなので、間を置かずすぐにロッドをサイドに引き込んであわせた!!


ギュィッ!!
ジィィッ!!


重みは乗ったが、相手からの引きがこなかったので、リーリングしつつロッドを更にサイド奥へと引き込む!!


グヌゥゥゥッ!!
ジッ…チ...チ...チ...チ...チ...


あ………

この手応えは翔の好物。

ひたすら重いが際立つリアクションが無い。

けど非常に美味いアイツだ。

翔はラインに掛かるテンションを一定に保ちながら、慎重に寄せていく。

無理やりシャクリあげたり負荷を掛けると、フッキングポイントによっては歯によって簡単にラインを切られてしまう。

相手が足元水面まで現れたら、横方向のテンションをゆっくりと縦方向にずらしていき、十分なストロークを確保して抜き上げッ!!



ドチャ!!
ワッチャ ワッチャワッチャ......



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コイツが釣れたら絶対にバス持ちしてはいけない。

バス持ちしたくなるような口をしているが、ダメ...絶対。

以前、分かっていながらも親指を入れ、期待を裏切ることなくカプッとやられて皮膚に無数の穴をあけられている。

40cmの良型だが、卵を抱えているわけではないので、シュっと細く見えるが、これまた良い味を出してくれそうだ。

釣り応えは地味だが、釣った後からジワジワと喜びが込み上げる。

脳締めと血抜きを施したら、防波堤先端までポイントをずらし、次の獲物を狙っていこう…………と生き込むも、ここで急に風が強まり雪が降り出す。

状況的に内海が攻められなくなったため、外海をスイミング系で広く探るが、うまくいかず、根掛かりとロストを繰り返してしまう。

日付けが変わるまでに状況が好転しなければ帰ろうと決意し、様子を伺っていると、制限時間間際で雪は止み、風も釣りができるまでに回復した。

その後暫く、先端を中心にボトムや根の奥を探るような釣りを展開するも、海の状況も変わってしまったのか、ソイの反応すら消えてしまった。

ここまで探ってきた結果を自分なりに考察した結果、根周りに縄張りを張って居着いているアブラコは、まだ非常に少ないのではないかという結論に至り、広く探るため先程のようにスイミング系であちこち行っては来たりしながら撃ち込んだ。
 
すると、先端外海側からゴォーという轟音が聞こえてきた。

潮だ。

内海から外海へと払い出す潮が強くなると、その潮が離れの防波堤にぶつかり、ゴォゴォと鳴るのだ。

こういった変化こそ狙い目。
 
その潮のド真ん中に撃ち込んでやることにした。

翔はテキサスリグを分解。

ツールボックスから5号のナス型オモリを取り出し、シンカーを入れ替える。

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このナス型オモリのフリーリグ、非常によく飛ぶのだ。

これをしっかりと遠心力に乗せ…………

カッ飛ばす!!

潮流のド真ん中より向こう側まで到達したリグを正確に着底させ、イレギュラーでトゥイッチを入れるなど変化をつけながらなるべく低い速度で巻き、所々でテンションフォール……

着底したらシェイクしてステイ……

ひと呼吸おいてまたスイミング……

この一連を少しずつ方向をずらしながら扇状にサーチ。

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すると数投目…………



ダッ!!



ボトムでシェイクしてからスイミングに以降したタイミングで、明確で重たいあたりが出た!!

はやる気持ちを抑え込みつつ、余計なラインをササッと巻き取りストロークを確保!!

翔は右巻きスタイルなので、バックハンド側に大きな動作でロッドを引き寄せた!!!



ギュフッ!!
ジジッ!!



大きく引きつけた左腕は、ロッドに重みが乗り切ると同時に引き止められた!! 


ティップからベリーのしなりが相手の動きを吸収し、バットが支えながら相手を引き寄せる!!



ドダダダダダダダダッ!!



ロッドが激しく振れ動く!!

相手の必死さがビシビシと伝わってくる!!

しかし、相手に感動してばかりも居られない。

近距離の駆け上がりで掛けたならまだしも、翔が撃ち込んだのは潮の通り道で、非常に深いエリア。

更に先端周りの駆け上がりは南防波堤でもっとも険しく勾配も急で、油断すると潜られるのはもちろん、根ズレによるブレイクも十分に有り得る。

ある程度寄せたところで、引き付けを横から上方向へとシフトさせていく!!



ドッドッドドドッ!!



引きが次第にシャープになっていき、間合いが詰まっていることを感じる!!

もう少し………

………

………

………

来たッ!!

先端の柵の少し向こうに、ぼんやりお魚体を確認!!

腰を落としロッドを真下に構え………

水面から出さないように引き寄せ………

真下に差し掛かったところでテンションを横から縦へスムーズに移行………

ラインを巻いてストロークを確保………

片手をバットに添えて負荷が掛るのを感じ………

あとは躊躇せず一気に………

行けるッ!!


抜くッ!!


……………………


ドザッ!!


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ヨッッッッシ!!!

体格のしっかりとした42cmのアブラコ!!

長い距離を、この力強くたくましいアブラコと戦い、何とか勝ち取った一本!!

嬉しい!!

嬉しいッ!!

決して容易ではなかったが、今回もこうして出会えることができた!!

たまらない!!

感動ッ!!!

翔はこのあと、最高な気分で極寒の海に向かうものの追加はなく、タイムリミットの3時を迎えて終了!!

長い防波堤を軽い足取りで戻った。



強いて今回の勝因を述べるとしたら、こだわり過ぎなかったこと。

過去の経験で、実績を出してきた駆け上がりの根周りに執着していたら、今回はアブラコに出会えていなかったと思う。

前回に大満足のビッグサイズを引き当てていた余裕こそが、執着という呪縛に支配されなかった要因だろう。

何はともあれ、頭の中にふと蘇ってきていたイメージを実現化することに成功。

この感覚を忘れないよう、また次の釣行に望みたい。



そういえば、翔が防波堤を戻る途中、ある男性に声を掛けていただいた。

当ブログの大ファンだと言ってくださるその方は、翔を参考に……と、タックルまで同じく揃えているという『イワノリ』さん。

『イワノリ』というのはtwitterアカウントなどのハンドルネームではなく、以前使用していたラジオネームなんだそう。

翔が暫くブログ更新をサボっていた間は、ブログ第1号から遡って読んでくれていたのだという。

そんな言葉に翔は、自分もいちブロガーであることを実感。

なんの気無しに書き綴ってきたブログだが、こうした方々に支えられているということは、感謝してもしきれない程だ。

釣果にも恵まれ、読者様の有り難いお言葉もいただき、幸せな気分で防波堤をあとにしたのであった。

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帰宅したらすぐに後処理の時間!!

この時間がまたなんとも楽しい。

出勤までの短い間に仮眠を取らなければならないが、そんな事も忘れてしまう。

いつどうやって食べようか……この魚とのファイトはこんなだったな……など考えながら魚を捌き、思い出を心に刻んでいく。

今回は、前回に引き続きイイ釣果に巡り会えた。

そしてまたひとつ余裕を心に蓄えることができたので、次もまた自分なりに色々な方法にチャレンジしたり、新たな発見に繋がる釣りができたらなぁと思った。

そして翔は最高の熟睡の後、いつも通り職場へと向ったのであった。



■釣果■
・アブラコ×1
・カジカ×1
・シマソイ×1
・マゾイ×2