翔は前回…前々回のホッケ釣行で、釣りに対する欲求がかなり満たされ、気分的に大きな余白を持ち合わせていた。

そのため、12月に入って本格的な冬が到来し、荒れた天候に見舞われて釣りに行けない状態でも、道具のメンテナンスや釣り具の自作なんかしながら、余裕をもって過ごすことができていた。

そんな中、いつものようにツイッターを徘徊していると、いつも仲良くさせていただいている素敵な女性、おデコリアンさんという方のツイートに目が留まる。

冬ニシンを釣り、そのニシンを捌いてお造りに………いう内容であったが、添付された写真が翔の食欲に炎を灯した。

その写真がこちら………。

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実に美味しそうだ。

丁寧に捌かれた身は、脂が乗ってしっとりと艶めいており、実際に口に入れずとも味が伝わってくる。

目が留まるどころか、もう……釘付けだ。

正直なところ、ニシンに対して今まであまり強い関心を抱いたことはなかった。

去年の今頃、石狩でニシンを釣っていたが、ニシンを狙っていったわけではなく、釣れないコマイ釣りに痺れを切らしてニシン釣りに転向したという経緯からであった。

そんな翔がこのツイートに巡り合い、ニシンに対する衝動に駆られ、釣行を決断するのにそう時間は掛からなかった。

そして行くと決めたら行動は早い。

その日の夜には出陣だ。

そこで翔、母にニシン釣行について連絡を取ってみたところ、母も行きたいッ……ということになった。

というのも、実は先日……母とホッケ釣りに行くことになっていたのだが、天候が思わしくないので中止としていた。
 
母も楽しみにしていた分、結構ガッカリしていたので、今回はその穴埋めでもできれば………ということもあり、誘ってみたのだ。

決断した翔は仕事を2倍……いや3倍ペースで進め、定時で退勤。

翔の自宅で母と合流し、食事を済ませて19時頃に出発した!!

向かうは小樽。

場所についてはよくブログに登場する、みや-TEXさんに相談を持ちかけたところ、一緒になって作戦を練っていただき、それに沿って行動を進めた。

まずは若竹岸壁。

人が少ない………。

次………


北浜岸壁。

これまた人が少ない………。


次………

厩町岸壁。

人がわんさか!!!

平日でありながらも、ざっと20組くらいは居る!!!

流石、ニシンの定番スポットなだけある。

この手の釣り、釣果を望むならこの定番に乗っかるのがセオリーだ。

人が沢山居て、沢山の撒き餌が撒かれ、それを求めて岸を回遊してきた獲物を捕らえるのだ。

しかし、そうは言っても入る場所が無い。

この厩町岸壁、イカ……イワシ……サバ等の回遊系は、奥の端っこに近い場所が狙い目になる。

なので、当然奥の方に詰めていく事になるが、時既に遅し………。

もういっぱいいっぱい。

こりゃだめか………と思いながらあっち来たりこっち来たりしてると、奥とは離れた手前側、僅かに場所が空いているスポットを発見した。

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ここしかないと、車を停めて現場を視察……。

すると、なぜそこが空いていたのかがすぐに分かった。

ロープ……………。

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停泊している船から延びるロープがなんとも絶妙な距離にあり、竿を出しにくいのだ。

越えるにも辛く、手前を狙うにも微妙な感じだ。

だからといってそれを克服せねば、離れに釣座を構えるか、もしくは人の少ない北浜や若竹などに移るかしかない。

少し迷ったが、両隣の方に承諾を得てそこに釣座を構えることにした。

そこに勝算が無いわけではない。

今回、よく行く南防波堤のように、車から離れたところでの釣りではないので、磯竿を数種類持ってきていた。

その中でも1番長い630の磯竿を使えば、なんとか攻略できるのではないかと思ったのだ。

望みの薄い場所でやるよりも、まだ望みのある場所で竿一本でも出せれば良しと思っての判断。

決めたら準備!!

発電機に火を入れ、ライトを点灯したら竿を用意………………。

すると、左隣の方がそっと声を掛けてくれのだが、その内容にガッツポーズ!!

「しばらくニシンの回遊が無くて、左の人やめて帰るそうです……。なので私そっちに詰めるのでこちらどうぞ………。」

おっし!!!

ラッキィ!!!

お言葉に甘えて障害物のみ無い場所に釣座を構えることができた。

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ありがたい………

本当にありがたいっ!!

ひと通り準備を終え、撒き餌を撒きながら様子を見ていると、やはり奥の方でポツポツとニシンが揚がっている。

悔しいがこちらの方まで回ってくる程の大きな群れではなく、たまにアタリがあっても、チカや小ニシンのみ。

打つ!!!

撒き餌を打つ!!

魚の反応が無いときこそ、撒き餌を切らさないよう、少しずつでも定期的に撒く。

20時に釣りを初めてから2時間後………。

諦めずに磯竿をシャクっていると………

しゃくり上げた竿先にズッシリとした重みが突然乗った!!!

ズンッ!!!

おっ!!!!

足元で走っている!!!

ゆっくりと動きを押さえ込みつつ、ぐぅーっと力を込めながら抜き上げるッ!!!

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立派なニシンだッ!!!

嬉しい!!!

喜びを噛み締めて居ると、母も竿を曲げている!!

群れが来たか!!!

すかさず撒き餌を投下!!

群れを留める!!

釣れるときに釣る!!!

垂らしで釣る以上、足元に魚が居るときしか釣れないので、とにかく魚を留め、居るうちに手返し良く釣るしかない!!

なので釣れたら魚をすぐに外し、仕掛けを即再投入!!

群れが離れたら、地面でバタつく魚たちを血抜きして水を張ったバケツに入れていく。

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楽しいっ!!!

そして嬉しい!!!

これで旬の食材にありつける!!



因みに、今回使用した仕掛けは、以前に買って在庫していた針7号…ハリス1.5号…幹糸3号のサビキ仕掛け。

当初は3号のナス型オモリを付けていたが、周りの人の仕掛けを見て閃いた。

皆さん、サビキ仕掛けに大きな集魚板を付けている。

集魚版はシャクリの動きを受けてヒラヒラと動き、光を反射しキラキラとアピール。

翔も集魚板を持っていたが、最近ずっとルアーを扱ってきた身からすると、なんだかそれでは物足りない。

ならばと思い、翔はナス型オモリの代わりに16gのメタルジグを装着。

俗に言うジグサビキの状態にし、強めにシャクリ上げたらラインをフカしてフリーフォール………。

おお………ヒラヒラ……キラキラとアピールしながらゆっくりと落ちていく!!

ギュゥッとしゃくり上げたら竿を降ろしてフリーフォール…………

落ちてテンションが掛かったらひと呼吸置いてまたシャクリ上げる。

そしてフリーフォール………。

ひと呼吸置いてシャク……!!

ドンッ!!

来た来たっ!!!

使用するメタルジグは体高が高く、平べったいセンターバランスのものが良い。



他にもサビキ釣りならではのコツが少々。

まずは、タナを探る事。

ニシンは回遊する魚であるが、通常回遊する棚は表層ではなく中層から低層辺り。

なので、回遊待ちの時間は中層まで仕掛けを落とし、シャクリながら待つ。

そこでヒットし始めたら、撒き餌を追い撒きして魚を足止めするのだが、そうなると魚は撒き餌を食べるために表層近くまで上がってくる。

そしたら今度はタナを浅めにして中層と表層の間らへんに調整!!

上げすぎると投光器の光で仕掛けが丸見えになって見切られるので、その瀬戸際を攻める。


もうひとつのコツは撒き餌の撒くポイント。

これは、潮流が関係してくる。

港内といえど、潮の満ち引き等に影響され、潮流が発生する。

流れてなければ真正面に打てばいいが、潮流があるなら、その速度と撒き餌の沈下速度を読んで打つ場所を調節しなければ撒き餌の効果を発揮できないのだ。

例えば、仕掛けを落としている棚が水面より2m下だとする。

撒き餌の沈下スピードが、10秒で1m……潮流が10秒で1m程右に流れているとする。
(この設定は数値的に分かりやすいようにしたもの……)

そういった場合だと、2m左に撒き餌を打ち込めば、自分が垂らしているポイントに20秒後に到達する事になる。

まぁ、こんな細く計算できるほど単純ではないので、感覚的にザックリとでいい。

要は潮流があるときに真正面に撒き餌を打っても、自分が仕掛けを垂らしているポイントからは大きく外れている事が多いということだ。

実際、今回の状況では、自分の真下から左1.5〜2mくらいに打ち込んでいた。



そんなこんなで気付けば日付をまたいで0時を少し過ぎたあたり!

時間を忘れてニシンと戯れていたが、周りの人も帰り始めたので、合せて翔も後片付け。

今回の釣行時間は4時間とちょっとで、ポイントが一等地から一番離れた場所であったこともあり、終始渋くはないが、小さな群れが飽きない程度に回ってきていた感じであった。

最後に血抜きバケツの水をもう一度新鮮な水に取り替えて帰路に着いた。

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ここから眺める夜景はいつ観ても綺麗だ……。



家に着くと、母は10匹のニシンを持って帰宅。

翔はその後、家のシンクに魚をブチまいて水産加工場ごっこだ………。

次の日…………いや、直後に通常通り会社へ出勤だが、ここで手を抜かない。

やると決めたらやるっ!!!

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………………。

泣きそうだ……。

こうやって見て初めて、結構釣ったんだなぁと実感……。

これでも母が10匹持っていった後の写真なので、釣果はこれプラス10匹。

この時点では数える気になれないので、まずは捌く!!

無心で捌く!!!

捌いて居るうちに楽しくなって来るもんだ。

楽しくて楽しくて、時間も忘れて捌いた。



サバ、ニシン、イワシ等の魚は、血抜きとこの後処理が味をかなり左右する。

他の魚に比べて血が多い………というか、血が濃い………というか、血の臭みが強い。

それを放って置くと、身に血やその臭みがどんどん回っていってしまう。

特にこれ!!

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この中骨に沿うように入っている血合いが臭みを生む。

コレを指先でしっかり剥がし落とし、取れない部分は歯ブラシで擦り落としてやる。

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そしたら今度は加工調理用と刺し身用に選り分け、刺し身用はすぐに三枚おろしにして皮を剥ぎ、キッチンペーパーで挟み、他はそのままストック。

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捌き終えたら内蔵を処理し、キッチンを掃除したら、今度は道具の手入れだ。

リールを水洗いして、磯竿にこびり付いた勝利の鱗を取ってきれいにするため一緒に入浴。

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そんなこんなで、4時30分。

1時間ちょっと寝たら準備を整え、ごく普通の会社員として何も無かったかのように会社に出勤するのであった………。



今回は、おデコリアンさんのツイート画像に魅せられ釣行を決意……。

みや-TEXさんに相談に乗ってもらいながら計画を練り……。

隣の方に場所を譲ってもらって実釣……。

自然の恵みだけでなく、色んな刺激や手助けによってこうして楽しむことができた。

感謝ッ!!!



そして翌日………。

仕事から帰宅し魚の調理を担当。

食卓を冬ニシン料理で埋め尽くした。

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冬ニシンのお造り

乗りに乗った脂が口の中で溶けてくもしつこくなく、ニシンの奥行きのある風味と、付け合わせた生姜が相まって爽やかに鼻を抜けていく。

食感もしっかりとしていて新鮮さを感じる。



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白焼き冬ニシンの三杯酢掛け

素焼きしたニシンに玉ねぎと人参の千切りを付け合せ、三杯酢を掛けていただく。

シャキシャキとした食感と、焼いたニシンの香ばしさ、爽快な三杯酢の風味がどんどん箸を進ませる。



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冬ニシンのタタキ

荒目に叩いたニシンの身に、すりおろし生姜と刻みネギを絡め合わせた。

コレをそのまま醤油で食べるのもイイが、熱々のご飯に乗せ、にんにく醤油をたっぷりと掛けて頬張るのがこれまた美味ッ!!

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ニシンの滲み出る旨味、広がるネギの香り、生姜の鮮烈な風味をにんにく醤油がうまい具合にまとめ上げ、口一杯に頬張る幸福感と共に心に染み渡る。



釣ったときの心弾む楽しさもさることながら、旬の味覚をこうして堪能するのもまた釣りの醍醐味。

釣りをやっていて本当に良かったと思える瞬間だ。



冬もどんどん深まり季節は刻々と変わる。

今度はどんな魚に出会え、どんな味を楽しめるのか。

この先の釣りを考えるのもまた楽しいひとときだ。



■釣果■
・ニシン×68
・チカ×6
・子ニシン×4